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ニュースオバマ大統領ヒロシマ訪問
BLOG2016.6.11
オバマ大統領ヒロシマ訪問

 


平成28年5月28日、戦後71年が経過したが現職の米国大統領が、被爆地ヒロシマ訪問が実現した。理屈抜きで本当に感激する出来事だった。最近、年を取ってきたせいか、涙腺が弱くなり、ちょっとしたことでも緩んでしまうが、再放送のビデオの映像でも、目頭が熱くなるのは困ったものだと思う。テレビの映像を通して映った、オバマ大統領の真摯な姿と格調の高い演説、さらに出席した被爆者代表の方々の姿が心線を震えさせるのだろう。

過去、米ソの冷戦時代の頃、広島や長崎で行われる平和式典に日本の首相が参列することに対し、一部の人から強い反発があったことを覚えている。一部の平和運動だが、何か政治的色彩を強く感じ違和感を覚えた。今回、被爆者の方々やその遺族の方にとっては、心理的抵抗を乗り越えるのは、言葉に言い表せないことがあったと思うが、それを表に出さず、大統領と接した姿にも感動を覚える。今回は、日本の世論、米国の世論がそれぞれ肯定的だったことは大変良かった。

今回のヒロシマ訪問だが、現職の大統領の訪問の実現は簡単なことではない。
良くそこまで決断して貰えたと思っているし、改めて米国という国の懐の深さを感じている。また、それに至るまで、駐日米国大使や国務長官という段階的にステップを踏み、慎重に進めていったことも良かったと思う。日米のこの問題に携わった外交当局の努力に敬意を表したい。

しかし、冷静に考えると、この事が「核兵器廃絶」の始まりであっても、道のりは果てしなく遠いことに思える。次期アメリカ合衆国の大統領選挙が今年行われるが、次の大統領候補に受け継がれるだろうか。また、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平主席はこの出来事に対しどの様に思っているのだろうか。彼らは余計なことをしたと不快に思っているのではないだろうか。さらに、現在の中東の混乱を見ていると、これまでの世界観を作ってきた欧米の民主主義そのものを否定するような、悲惨な出来事が起こっているし、さらに、この兵器を持たなければ国家存続が出来ないという狂信的な国家もアジアには存在する。そのことを考えると悲観的にならざるを得ないが、少しでも理想に近づけるための意見を述べてみたい。

人類はその歴史の中で、過去国家間で幾多の争いを演じてきた。「主権国家は絶えず自国の権力と利害を追及するもので、追及の仕方に賢明な方法はあっても本質は変わらない」というのが、歴史を学んできた現実主義的な、国家運営の責任者の責任ある考えではないだろうか。

今後、オバマ氏の後を継ぐ大統領が彼の理想を現実化しようとするなら、プーチンや習近平の様な現実主義的なリーダーと目線を合わせる必要があると思っている。核兵器はそれを維持管理するだけでも膨大なコストが掛っている。一時期ソ連が崩壊し、核軍縮が進んだのも老朽化した核を保持するだけでも国家財政に多大な負担がかかるからである。また、今のリーダー達もこの兵器は一旦使ったら人類の破滅になることも理解しているはずである。そのことを共通の利害として、まず、最低限必要とする数字にすることをテーマに、コストとメリットを前提に話し合わなければ、理想だけでは進まないのではないだろうか。中国が参加するには、彼らの保有数は少なく、この事には乗ってかないと思うが、狂信的なリーダーが出現する国にこの兵器が拡散すことは、中国も望まないと思う。現状のロシアと中国を交渉の場に着かせるには、理想では無く利害しかないと考えている。

核廃絶ということは、果てしない道のりだが、オバマ大統領の理念を継承しながら、一歩ずつでも理想に近づける現実的な交渉力のある次のリーダーの出現が望まれる。