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ニュース「日本人の勝算」 デービッド・アトキンソン著
BLOG2019.5.21
「日本人の勝算」 デービッド・アトキンソン著

最近のテレビや雑誌の紹介で話題になっており、既にご存じの方も多いと思うが、是非このブログで紹介したいと思い、氏と本の内容を書かせて頂く。ただし私の浅薄な知識では紹介しきれないことも多いので、興味を持たれた方は、本を買って、是非読んで頂きたい。

デービッド・アトキンソン氏の経歴だが、本の巻末には『小西美術工藝社社長。1965年イギリス生まれ。日本在住30年。オックスフォード大学「日本学」専攻。裏千家茶名「宗真」拝受。1992年ゴールドマン・サックス入社。金融調査室室長として日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年に共同出資者になるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年同社会長兼社長に就任。2017年から日本政府観光局特別顧問を務める』となっている。

氏と本を知ることになったのは、4年前、「新・観光立国論」からである。当時北陸新幹線が金沢まで開業し、将来福井市まで延伸されることが決まっており、福井商工会議所の方で、その準備としての提言をまとめる「北陸新幹線・福井開業問題専門委員会」が設置され、その提言をまとめるための参考文献として読んだのがきっかけだった。その専門委員で、北陸経済研究所の藤沢氏(富山市在住、福井県出身)が、20名余りの委員のベクトルを合わせるのに、是非にと推薦され、委員全員で読んでから議論をスタートさせた。本業が観光ではない不勉強な私としては、とても新鮮でインパクトのあるもので大変勉強になった。その頃はインバウンドとして海外からの観光客が1000万人に満たず、国でも「観光庁」が起動したばかりの時期だった。今では海外からの観光客が急増し当たり前と思っているが、観光を「観光産業」としてとらえ、お金を落としてもらうことが大切という氏の考えは、とても印象に残っている。

4月の連休前だが、何気なくBSの時事問題解説の番組を見ていたところ、氏が登場し日本人以上に流暢な日本語で、少子高齢化、人口減少の日本について話をしていて、早速、近著として昨年出版された「新・生産性立国論」と表題の「日本人の勝算」(2019年1月出版)を購入した。

昨年の本は4月連休前カンボジア出張時の飛行機の中で、後者は連休中に読み終えたが、30年間のデフレ状態から抜けきれない日本の将来にとって、とても参考になる本だと思う。論旨は、「経済成長は主にこれまで人口の増加と比例しており、人口が世界的にも例のないスピードで減少する日本は、ここで大きく政策転換しないと大変なことになる」「将来の社会保障は1.3人で1人の高齢者を養っていくことになり、一人当たりの生産性を高めなければ社会保障制度が崩壊する」 次のことは多くの日本人が認識として間違って捉えていることで、テレビでも話に出ていたが「日本人の人材の質ランキングでは世界4位なのに、労働者一人当たりの生産性(一人当たりのGDP)は世界29位となっている。現在は韓国や台湾より低く、最低賃金をイギリスが行ったように計画的に上げていかなければならない」「日本は輸出立国となっているが、実は一人当たりの輸出額が少なく、これまで人口に支えられた内需の比率が大きかった」「人手不足を安易に外国人労働者に頼るのでなく、生産性の高い産業にシフトしていくことが大切で、企業規模も大きくする必要がある」また、これは身につまされることだが「今までの日本の経営者は、質の高い労働者を安価に使っていたが、これは誰でも出来ることで、もっと生産性の上がる企業に変えていかなければならない」というような内容となっている。

海外では生産はするものの内需一辺倒の当社だが、海外の富裕層に買ってもらえる商品の開発、メイドインジャパンを考えなくてはならないと改めて感じている。